2010年代映画ベスト6

記録用。

 

・『ある女優の不在』ジャファル・パナヒ

・『映画 プリキュアオールスターズ New Stage みらいのともだち』志水淳児

・『グランド・ブタペスト・ホテル』ウェス・アンダーソン

・『ホーリーモーターズ』レオス・カラックス

・『ブレードランナー 2049』ドゥニ・ヴィルヌーヴ

・『光りの墓』アピチャッポン・ウィーラセタクン

(五十音順)

 

なぜベスト6なのか。それは、5本選んで記事を書いた後に『グランド・ブダペスト・ホテル』の存在を思い出したから!

 

・『ある女優の不在』ジャファル・パナヒ

表現への渇望。師であるキアロスタミから受け継ぐべきイラン映画史。心霊ビデオ形式(そんな形式があるのか)で撮りあげられたこの映画は、主演でもある監督の姿を起点に現実と虚構の世界がオーバーラップし、それゆえにどのシーンも示唆的で美しい。そしてなにより、1人の作家の強い意志によって映画史の1ページが紡がれる瞬間を確かに目撃したという感動がある。

なお、『コワすぎ4 トイレの花子さん』『コワすぎ 最終章』なども候補にあったが、心霊ビデオ枠ということでこちらに譲ってもらった。しかし、ゴダールが「映画は、グリフィスにはじまりキアロスタミに終わった」と言ったらしいけど、その次のページは心霊ビデオかもしれないよ、ほんとに。

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・『映画 プリキュアオールスターズ New Stage みらいののともだち』志水淳児

この10年は、アメコミ映画が常に映画業界のメインストリームにあり続けた。しかしMCUに途中から置いていかれた私には、アベンジャーズよりプリキュアオールスターズということで(?)これを。友達のために一歩を踏み出す勇気さえあれば、どんな人でもヒーローになれる。そんなメッセージをこの作品以上に力強く描いた作品を他に知らない。

なお、『LOGAN』なども候補であったが、そもそもX-MENシリーズ全然観てないということでヒーロー枠はこちらに。いやプリキュアも別にちゃんと観てないのだけど。

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・『グランド・ブタペスト・ホテル』

劇中のホテルのサービス哲学や時間的に何重もの入子構造は、映画それ自体の幻想性と、長い映画史の中おける自らの存在についての言及でもあるのです。このテーマと表現の合致が美しく、それを山あり谷ありのアクションエンターテイメントとして100分で仕上げるのだから文句無しです。忘れていて本当にごめん。

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・『光りの墓』

映画は寝ているときにみる夢と同じと思っている私にとって、アピチャッポンは究極の作家だ。もしかしたらわたしはこの映画を最初から最後まで寝ずに観たことが1度もないかもしれない。途中でうとうとして、起きると映画がある。そのとき映画と夢は一体になる。

ブンミおじさんの森』でもよいし、当日券に3時間並んで観た『フィーバールーム』も入れれるものなら入れたいが、最初に触れたアピチャッポン作品がこれなので、選んでおく。

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・『ブレードランナー 2049』ドゥニ・ヴィルヌーヴ

「この犬は本物なのか?」と言うセリフにハッとさせられた。似たセリフは82年の『ブレードランナー』にも何度か出てくる。蛇やフクロウは本物そのものの見た目で、間違いなく本物を使って撮影していて、しかし本物ではない、ということになっていた。82年の映画ではそれは脚本上の機能でしかなかった。

しかし2017年に同じ問いかけをされると、思わず考え込んでしまう。あの犬がCGでないと断言する証拠がどこにもないからだ。このときはじめて、人とレプリカントの区別のつかない世界に足を踏み入れたような気がした。そののち、本物にしか見えないCGや、CGにしか見えない本物が画面に登場し、観終えてから振り返ってみると、全てが夢のような、そうでないような、不思議な感覚をおぼえた。

そう考えてゆくと、記憶を創り出す彼女こそが奇跡の子であったのは必然に思える。本物と偽物の差が消えかけている世界で、本物と信じられるようなものを創り出すことこそが奇跡なのだ。

そしてこれはそのまま、CG技術が成熟した2017年の映画の状況に置き換えることができる。その意味で、2017年に作られるべくして作られたエポック的作品なのではないかとさえ思う。私にとって、公開から時間が経って、どんどん愛おしい作品になっている。

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・『ホーリーモーターズ』レオス・カラックス

まだ映画をみはじめのころ、公開年の年末、つまり2013年末に早稲田松竹で『ポンヌフの恋人』と二本立てを観た。その時に受けた衝撃があったから、今も映画を観ているかもしれない。個人的に外せない作品。

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以上。

もし選んでよいのなら、別格は『ツインピークス The Return』

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10年後にこの記事をみかえして、どう思うだろうか。